「組織で効果的なコミュニケーションを提唱する根拠は何か?」という質問に対し、地域の文化的背景によって答えは様々出てきます。
2024年3月27日
2024年3月27日
グローバル企業には、どのような人財でもチーム内部においても顧客やサプライヤーなど外部においても効果的なコミュニケーションを行うという重要なタスクがあります。
しかし、最近の調査で、見落とされがちなポイントが明らかになってきました。それは地域によってコミュニケーションの優先順位が異なるということです。
多国籍企業で働く1100人以上の人事・L&Dリーダーを対象に、当社の言語インパクトシリーズの一環として実施した調査では、コミュニケーションの動機について以下のような結果が得られました。
東アジア地域では、コミュニケーションに対してより対人的なアプローチをとる傾向にあり、対面での交流、グループトレーニング、人間関係に重点を置いている
ラテンアメリカ地域は、言葉をコミュニケーション目標の中心に置き、言語学習とインクルージョンを優先している
ヨーロッパ地域は、コミュニケーション目標に関して、言語よりも職場文化を重視する傾向が強い
全体的に企業は語学研修のメリットを非常に過小評価している傾向にある
「組織で効果的なコミュニケーションを提唱する根拠は何か?」という質問に対し、地域の文化的背景によって答えは様々出てきます。
東アジアでは、対面での交流と関係構築がコミュニケーション目標の中核です。日本では、国際的なコラボレーションにおける最大の課題は対面でのコミュニケーション不足であり、回答者の40%(世界平均 25%)がその影響を受けていると回答しています。例として他国では、対面でのコミュニケーション(25%)よりも、基本的なミスコミュニケーション(39%が誤解を恐れていると回答)を懸念しているという結果になっています。
東アジアの他の地域では、中国がコミュニケーション問題に対する敏感さを特に示しており、外部コミュニケーションと内部コミュニケーションの両方に関する懸念が他の地域よりも10%近く高く、最大97%がクライアントやチームとの関係に影響があると回答しています。
東アジアにおける関係性重視のコミュニケーションのもうひとつの指標は、ポジティブな成果として表れている。中国の回答者は、異文化間コラボレーションの最大のメリットは社内プロセスの改善であり、調査対象者の60%近くがそう回答しています(世界平均は41%)。
この視点がグローバルで共通しているわけではないのは明らかです。世界の他の国々では、効果的なコミュニ ケーションの主要な目標はパフォーマンスとイノベー ションと回答しています。アメリカ(56%)、イギリス(56%)、アラブ首長国連邦(63%) では、問題解決と新しい働き方が国際的なコラボレーションの最も大きなメリットとして挙げられているのです。
イギリスは英語を母国語とする国であるという利点から、コミュニケーション上の課題の上位に言語はランクインしていません。また、コミュニケーションの問題を語学研修で解決する傾向が最も低く(世界平均4%に対し、イギリスでは15%の企業が研修を行っていない)、その代わりに、グローバルチームで働くことの最大のメリットとして企業文化の多様性を謳うケースが多く存在します。言い換えれば、コミュニケーションの核となる言語が課題とならない場合、企業文化が重要な考慮事項となると言えます。
一方、ラテンアメリカでは、言語とインクルージョンをコミュニケーション目標の中心に据えている傾向にあります。例えばブラジルでは、言語の習熟度のギャップは世界平均をはるかに上回る課題であると報告されており、調査対象であるブラジル企業の42%が会社の主要言語に習熟していないと従業員の士気が低下することを懸念していると回答しています(世界平均は29%)。
他の地域では、英語がコミュニケーションの中心言語となっていない場合が多いです。フランスでは、企業が英語研修を実施する割合は低く(世界平均79%に対し55%)、習熟度格差に関する懸念も平均以下という結果が出ています。これは、ヨーロッパ諸国が言語的な側面よりも文化的な側面からコミュニケーションを重視するという傾向と一致していると言えます。
L&D担当者にとってグローバルチームを育成するための戦略は、上記のような地域的な違いや傾向に影響されてしまいます。
例えば、中国では、言語やコミュニケーションに関する研修は対面式が好まれ、世界平均の49%に対し68%となっている。一方、ブラジルはオンライン・トレーニングの実施率が最も高く、アクセシビリティを最重要視している傾向にあります。
報告された成功指標のうち、全地域で共通している項目もありました。日本では、従業員のエンゲージメント向上(人間関係に焦点を当てた指標)が、従業員の語学力を伸ばすことの最大のメリットとして報告されています。イギリスでは、企業文化、エンゲージメント、定着率、多様性に関連するメリットが上位にランクインしています。ブラジルは、全体的なコミュニケーションの主要な原動力として語学研修に最も投資しており、ビジネスのあらゆる分野で包括的な改善が見られたと報告があります。
結果的にどの地域であれ、語学研修は、多くの企業が期待する以上に幅広いプラスの効果をもたらしていることが分かります。我々の調査によると、語学研修を実施していない企業は、すでに語学研修を実施している企業の報告に比べ、市場拡大などビジネスに関連するメリットを大幅に過小評価していることが分かりました。
誰しもが同意できるのは、コミュニケーションは重要だということです。つまり、コミュニケーションの文化を育むには、地域的背景によって従業員がコミュニケーションにおける優先順位がどのように異なるかを理解することが重要です。そうすることで、従業員のケアと育成に意図的かつ個別的なアプローチをとることが可能になります。
グローバル企業にとって、「既製品」のようなソリューションなど存在しないのです。各企業には固有の課題があり、対応すべき地域も様々で、さらにコミュニケーションそのものが流動的な概念であり、人や文化によって左右されるのです。組織内のコミュニケーションのニュアンスを探り出し、社員の多様なニーズに応じてカスタマイズできるトレーニング・プロバイダーを見つけることが、今のグローバル社会におけるL&Dリーダーの仕事であると言えます。