2025年8月7日

今後5年間でL&Dリーダーが直面する最大の課題とは?

職場環境が急速に変化し続ける中、L&D(人材育成)リーダーには、テクノロジーと人間らしさの両面から生じる課題への対応が求められています。

2025年のグローバルサミットでは、HRおよびL&Dの専門家たちが、学びの未来を形成する重要なテーマについて見解を共有しました。不確実性の中でいかにリーダーシップを発揮するか、公平な学習機会をいかに提供するか、そして学習の成果をいかに可視化し、意味あるインパクトを証明するかといった内容が議論されました。

彼らの知見は、いま私たちが直面している課題の複雑さを浮き彫りにするだけでなく、これからの時代においてL&Dがより戦略的かつ影響力のある役割を担うための大きな可能性を示しています。

不確実性の時代を導くリーダーシップ


リーダーたちから声高に叫ばれる差し迫った懸念は、不確実性そのものへの挑戦である。地政学的、環境的、社会的、そして技術的に変化が起きており、安定した長期的な計画という考え方そのものが再定義されようとしている。

「今後数年間のL&Dリーダーにとっての最大の課題は、組織レベルでも社会レベルでも、私たちがどこに向かっているのかという信じられないような不確実性に対処することです。

– EFコーポレート・ラーニング、チーフ・アカデミック・オフィサー、クリストファー・マコーミック博士

このような環境の中で、L&Dチームは、新しい知識の習得だけでなく、適応力、批判的思考力、感情的回復力の構築において、従業員をサポートすることが求められている。それは、答えを提供することから、人々がより良い質問をし、自信を持って曖昧さを乗り越えることを支援することへのシフトである。

学習への公平なアクセスを確保する


もう一つの、より実務的な課題は、すべての従業員がその役職、勤務地、インフラ環境に関係なく、有意義な学習・成長の機会にアクセスできるようにすることです。

デジタルラーニングは柔軟性とスケーラビリティをもたらす一方で、アクセス環境の格差を浮き彫りにする側面もあります。特に、現場やフィールド業務、フロントラインで働く従業員にとっては、適切なテクノロジー環境が整っていなければ、学習プラットフォームへ接続すること自体が大きなハードルとなり得ます。

「「最大の課題は、おそらくAIの活用方法とツールそのものだと思います。現在はLMS(学習管理システム)を使っていますが、今後はLXP(学習体験プラットフォーム)にも注目しています。ただ最も重要なのは、全社員が個別化されたトレーニングの機会を平等に得られるようにすること、そして手作業から脱却することだと考えています。」

– エヴァ・ウィクマーク・ワリン(サンドビック社 VP 兼 グローバル従業員体験部門責任者)

この課題に対応するために、多くの企業がテクノロジーへのアクセス改善だけでなく、さまざまな職場環境の現実に即した学習設計にも力を入れ始めています。

すべてのデバイスに最適化された学習プラットフォームの整備はもちろん重要ですが、それと同時に、業務時間内に学習のための時間を確保することも欠かせません。

さらに、学習を個人の成長目標と直接結びつけることで、学習への意欲を高めるとともに、機会を「提供するだけ」ではなく、「すべての人が本当に活用できる」環境を整えることが可能になります。

実質的なインパクトの可視化


3つ目の重要なテーマとして何度も挙がったのが「インパクト(成果)」です。

L&Dリーダーにとって、投資対効果(ROI)の測定が難しいことは以前から知られていますが、近年では「ビジネスにどれだけの価値をもたらしているのか」を明確に示すことへの期待がますます高まっています。

「学習におけるROI(投資対効果)の測定は常に難しい課題です。ただ、私たちは毎年、社内のクライアントに対して調査を実施しており、従業員のウェルビーイングや学習施策に対する満足度を測るための複数のアンケートも活用しています。」

– パウロ・エスピンドゥラ(EYラテンアメリカ チーフ・ラーニング・オフィサー)

HRリーダーたちが共有した知見は、「研修を完了したかどうか」といった一時的な成果ではなく、学習が実際に人材の成長、パフォーマンス、エンゲージメントにどのように貢献しているかという、より包括的かつ継続的な成果指標へのシフトを反映しています。

L&Dの役割が大きく変革しつつあるということです


これらの課題はそれぞれ異なるものの、共通して示しているのは、L&Dの役割が大きく変革しつつあるということです。

それは単なるコンテンツ提供やスキル育成支援にとどまらず、組織が複雑な環境にどう対応し、いかに包摂的なカルチャーを築き、将来に向けて有意義で測定可能な形で人材を育てていくかを主導する存在としての役割です。

L&Dに携わるすべての人にとって、これからの5年間は「何を教えるか」ではなく、「どう導くか」がその価値を決める時代となるでしょう。