2026年8月11日
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AIによる自動化や業務アシスタントの台頭は、仕事のあり方を根本から変えつつあります。多くのリーダーの心に、ある不安がよぎるのではないでしょうか。「自分の役割も、いずれボットに取って代わられるのではないか」と。
Hult International Business School客員教授のDr. Eve Poole OBEは、その答えは「ノー」だと断言します。AIはロジックに基づく業務の多くを飛躍的に強化する一方で、AIのコードには組み込まれておらず、しかしすべての人間には組み込まれている、人間中心のスキル群が存在するというのです。
実際、Dr. Pooleが指摘する「人間らしい非効率さ("human junk code")」は、「人間であること」そのものの生々しい体験と密接に結びついているため、プログラム化することは不可能だといいます。
では、この「人間らしい非効率さ」とは何を指すのか。なぜそれが重要なのか。そして、なぜ私たちは長年それを軽視してきたのでしょうか。
私たちは、これまでAIのような競合相手を持ったことがありません。自分たちだけの特別で大切なものだと思っていた能力の多くを担える存在は、これまで存在しなかったのです。だからこそ私たちは今、「人間であるとはどういうことか」を問い直し、AIと競うのではなく、人間として在ることに、より長けていく必要があるのです。
「人間という設計」のリスクを軽減する
Dr. Pooleは、人類が何千年もの間生き延びてこられた要因となる特性こそが、優れたリーダーをつくる特性そのものだと主張します。なぜなら、どちらの場合も突き詰めれば一つの問いに行き着くからです。「自由意志を持つ人間は、集団の生存と幸福のために、どうすれば最善の意思決定ができるのか」という問いです。
Dr. Pooleはこう説明します。
「非効率なコード」こそが、あなたのリーダーシップの鍵です。リーダーシップとは、その定義上、意思決定に関わるものです。人々があなたに従うのは、あなたが進むべき方向を示しているからです。あなたは最悪の決断を避けようとする中で、この「非効率なコード」に組み込まれたリスク回避の仕組みを活用しているのです。
つまり、人間は不確実な世界の中で意思決定のリスクを減らすために、この「非効率なコード」を発達させてきたということです。それを機能させている特性は、以下の通りです。
感情 ―― コミュニティとのつながりを保ち、仲間を守る理由を与えるもの。そもそも人が意思決定を始める動機となる、「気にかける」力を生み出します。
直感 ―― 情報が乏しい「データ貧困」な状況でも、瞬時の判断を可能にする「勘」。
不確実性への耐性 ―― パラドックスを抱えたまま生きていく傾向。リスクが高いときに拙速な決断を避けるために進化したもの。
良心 ―― 道徳的な判断基準を時間とともに磨き上げ、より良い意思決定を可能にする仕組み。
意味づけとストーリーテリング ―― 目的をどう伝えるか。率いる人々に、日々ミッションを前進させる決断を下す動機を与えるもの。
このフレームワークは、人間の混沌とした予測不可能な側面を肯定し、共同体の生きた経験の価値を認めています。人間同士のこうした感受性はコードに書き込むことはできず、それゆえ、人間のリーダーがAIに対して今後も優位性を保ち続ける分野なのです。
リーダーとして「非効率なコード」を活かす
リーダーは、意識せずとも日々この「非効率なコード」の恩恵を受けています。それは、関係性を育み、ビジョンを形づくり、意思決定を実行に移す行動の設計図なのです。
例えば、優れたコミュニケーションは、感情的なつながり、勘(特に信頼)、そしてストーリーテリングの上に成り立っています。だからこそ、AIを使ってコミュニケーションを「完璧」にしようとすると、機械はコミュニケーションの人間的な側面 、すなわち「つながり」、を切り捨ててしまうリスクがあるのです。これが組織規模で起きれば、そのリスクはさらに大きくなることは言うまでもありません。メンタリング、フィードバック、企業のミッション・ビジョンステートメントといった、いわば企業の「らしさ」もまた、それぞれ不確実性・良心・意味づけという、私たちの独特な「プログラム」に根ざしています。Dr. Pooleはこう表現します。
「非効率なコード」の本当に有用な点は、それが「人間であるとはどういうことか」を教えてくれることです。そして、リーダーシップとは他者を率いることである以上、必要なのはこの「非効率なコード」だけなのです。
課題は、リーダーがこの「非効率なコード」を信頼できるようになることです。それはあまりにも頻繁に、論理や理性より低く評価されてきました。自らの「第六感」に耳を傾けること、感情的知性を磨くこと、不確実性を探求と学びのための道具として使うこと――挙げればきりがありません。AIが仕事の世界を動かす力となっていく中で、社員たちはこれまで以上に、リーダーに人間らしさを求めるはずです。目的意識、一体感、そしてつながりを与えてくれる人間らしさを。
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概要
Dr. Eve Poole OBE(Hult International Business School客員教授)
Dr Eve Poole OBEは、Hult Impact Leadership Labの客員フェローです。Durham大学で学士号、Edinburgh大学でMBA、Cambridge大学で博士号を取得。慈善セクターおよびDeloitte Consultingでのキャリアを経て、Ashridgeで10年間リーダーシップ論を教えました。
著書に『Leadersmithing』『Robot Souls』などがあります。The Royal Society of EdinburghおよびCarnegie Trust for the Universities of ScotlandのCEO、Gordonstounの理事長など、数々のシニアリーダーシップ職を歴任。2018年から2021年まで、イングランド国教会のThird Church Estates Commissionerを務め、現在はWoodard CorporationのExecutive Chairを務めています。教育とジェンダー平等への貢献が認められ、2023年New Year Honours ListでOBEを授与されました。
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